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シネマ・エンター 忘れないよ名作映画 第2回 「殺人の追憶」③

この作品では『』が重要なポイントになっていると思います。

 

多くの方の解説の中にも書かれてありますが、ソン・ガンホ演じるパク・トゥマン刑事がラストで画面越しにこちら側をジッと見つめます。これは、犯人も必ずやこの映画を観ているはず、だから「オマエを見てるぞ!」「逃げられないぞ!」というメッセージが込められています。

 

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映画の冒頭ではソン・ガンホ演じるパク刑事の捜査の様子が描かれますが、殺人現場や証拠品の保存は不完全で適当であり、パク刑事の見た目で全て判断されます。見た目が怪しい人物ならば片っ端から連行して疑い、障害者にいたっては犯人と決めつけ、スーツを着たエリートに対しては丁寧な言葉遣いで対応します。容疑者たちに対して暴力で自供に追い込み、その演出までもパク刑事が指導するのです。

 

そこへやって来たのがソウルから派遣されたエリート刑事、キム・サンギョン演じるソ・テユン刑事です。彼はパク刑事とは対照的に冷静な目で、事件を検証していき確実に証拠や証言を集めていき犯人像を絞り込んでいきます。

 

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捜査方法の違いから反発しあう二人ですが、次第に犯人に対しての捜査にパク刑事も本気になっていきます。聞き込みをする中で犯人を目撃した重要な人物が登場するのですが、その重要人物たちの目の奥、証言してる人の目線の先には犯人像が映っているはずなのですが、それがなかなかとらえられず、あともう一歩というところで目の前からまた遠のいてしまうのです。

 

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ラストに登場する少女の目線の先にも「普通の顔」だったという犯人の顔があるのです。

すぐそこに犯人がいるのに捕まえる事の出来ない、何か底無し沼にはまっていくような感覚‥‥その渦の中に観客も引っ張り込んでいく監督の演出が本当に素晴らしい作品です。

 

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是非ご覧になってみてください。