シネマ・エンター 忘れないよ名作映画 第22回 「シャイニング」③
元々スタンリー・キューブリックは写真家です。その技術や感覚があるので、1シーン、1シーン、こだわって撮影しています。その1カットで強いメッセージ、強烈なインパクトを与えています。
作品のポスターでも有名な、『ジャック・ニコルソンが叩き割ったドアの裂け目から顔を出す狂気の表情』を撮るために、わずか2秒程度のシーンを2週間かけて、190テイク以上の撮影をしたそうです。
この映画の撮影で開発されたステディカムの技術もあり、登場人物の動きに合わせてカメラが移動する撮影が効果的に使われています。
この移動撮影によって、何者かが見ているかのような不穏な雰囲気や、主人公のすぐそばに自分もいるような恐怖感があります。
撮影以外にもさまざまな要素が心理的な恐怖を感じさせます。まずはジャック・ニコルソンの狂気に満ちた演技ですね。普通の状態でもただならぬ雰囲気を漂わせているのですから、それ異常に何かが起こる恐怖を感じさせます‥
その他にもダニーが三輪車でホテルを走り回るシーンの、ゴロゴロというタイヤの音など‥『音』からも恐怖感を煽られます‥
異常現象が起こるホテルのフロアや部屋の色彩も気色の悪い雰囲気が漂っています‥
原作と違いキューブリック監督は、ハッキリとした説明を入れないので、例えば幽霊的なものが出現しますが、それが何者なのか意味不明です‥‥ラストの意味も不明です。そういうところが逆に想像力を無限に掻き立てられ、恐怖が倍増するのかも知れません‥
スピルバーグ監督も絶賛しているように、すべてが完璧な映画です。
そして子役のダニーの演技がとても素晴らしいですね。撮影中に何度もやり直しのテイクを重ねても、イヤな顔ひとつせずに演技を続けたそうです。また実際の名前と同じ『ダニー』という名前なので、監督も指示が出しやすく良い関係を築けたそうです。
わたくし同様にホラーが苦手な方も、ぜひ一度ご覧になってみて下さい。