シネマ・エンター 忘れないよ名作映画 第7回 「ロッキー」②
1960年代後半から1970年代半ばにかけてアメリカでベトナム戦争に邁進する政治に対する特に兵士として送られる若者層を中心とした反体制的な人間の心情を綴った映画作品が数多く製作されるようになり、このような作品はアメリカン・ニューシネマと呼ばれました。
反体制的な人物が体制に闘いを挑む、もしくは刹那的な出来事に情熱を傾けるなどするのだが、最後には体制側に圧殺されるか、あるいは悲劇的な結末を迎えるものが多く、「アンチ・ヒーロー」「アンチ・ハッピーエンド」が作品の特徴と言えると思います。
代表的な作品に「イージー・ライダー」や「俺たちに明日はない」などがあります。
「ロッキー」も当初はその路線だったようです。そのエンディングは、《試合前にミッキーが歪んだ人種差別的思想を表し、それに失望したロッキーが試合を放棄して会場を去る》というアメリカン・ニューシネマの特徴である陰鬱な展開になっていました。
しかし当時のスタローンの良きパートナーであったサーシャがそのエンディングに反対し、ロッキーは自分自身の人生をかけて、愛する人のために最後のラウンドまで闘い抜く感動の物語が生まれたのです。
ベトナム戦争も終結しアメリカン・ニューシネマも終わりを迎え、「ロッキー」の登場により映画の主人公と同様、無名だったスタローンが一夜にしてスターにのし上がる事によって《アメリカン・ドリーム》が再燃する事となり時代の転換点となりました。この後のハリウッド映画の作風は変化していき「スターウォーズ」や「スーパーマン」、「ジョーズ」などの映画が作られるようになったのです。