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シネマ・エンター 忘れないよ名作映画 第3回 「グラン・トリノ」③

映画の冒頭、主人公ウォルト(クリント・イーストウッド)が妻の葬儀を教会で行っているところから始まります。そこに息子たち家族や親戚たちが集まっていますが、元軍人の無口で厳しい頑固オヤジのウォルトは、みんなから鬱陶しく煙たい存在に思われています。

ウォルトも息子家族のいい加減な態度、表面的なだけの気遣い、自分たちの損得しか考えていない言動に苛立ち、距離を置いています。

 

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こんな頑固オヤジって昔の日本にもいました。悪い事をしたら厳しく怒ったり、弱き者が虐げられていれば誰であれ体を張って助ける、頑固オヤジがそこにいるだけで背筋がピンっと伸びて緊張感が走るような、そういう厳格な人が昔の日本にもいましたよね。

それがいつの間にか、そうした威厳あるオヤジたちはいなくなってしまい、得体の知れない「個性」だとか「自由」が横行し始め日本の美しき姿も変化して、守るべき大切なものまでも失われつつあるように思います。

 

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話しを映画に戻しまして‥

引っ越してきたばかりのアジア人(モン族)に対する差別的な言動はありますが、それは根っからの差別的な意識からではなく、愛国心から出ている言葉なのだと思います。

その証拠に、隣に越してきたモン族の女の子が黒人の男たちに囲まれているところを躊躇なく助けます。

身近であるはずの家族とは全く打ち解けることが出来ず距離が開くばかりですが、隣に越してきた文化も年代も何もかも違うモン族とは距離が縮まって、ウォルトも心を許していきます。

 

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主人公のウォルトもポーランド系の移民です。友人の床屋の主人はイタリア系です。彼らには古き良きアメリカを自分たちが築きあげ、命がけで守ってきたという誇りがあるのです。

しかしながら時代と共に、家族や周りの人間、環境‥‥ウォルトはフォード車を愛してきましたが息子夫婦は日本車に乗っていたり‥‥さまざまなものが変化していって、失ってはいけない心さえ人々は消えていきそうになっているのです。

そんな中でモン族の伝統を重んじる生活スタイルや家族中心に和を大切にする心が、ウォルトのハートに響いたのだと思います。

 

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ラストにかけての展開は賛否があるのかも知れませんが、イーストウッド流の《男として大切なもの》、イーストウッド流の《愛国心》、イーストウッド流の《生き様》を表現しているのだと思います。

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僕自身はラストで涙が止まらなかったです😭

 

みなさんも是非ご覧になってみて下さい。