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シネマ・エンター 忘れないよ名作映画 第4回 「蜘蛛女のキス」③

この作品の冒頭、ホモ・セクシュアルであるモリーナ(ウィリアム・ハート)が自分の大好きな映画のストーリーを、その役柄に入り込んで感情豊かに語っているところから始まります。

それを聞いているヴァレンティン(ラウル・ジュリア)

 

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モリーナは繊細で優しい心の持ち主であり、逆にヴァレンティンは革命に闘志を燃やす、感情の激しい性格であり、このモリーナが語る映画化に対してもお互いに捉え方が違うのです。

 

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モリーナが語る映画はナチスドイツが主人公の映画なのですが、ヴァレンティンは「そんなのナチスプロパガンダ映画ではないか!ナチスが何をやったか知らないのか‼︎」と怒りを露わにします。しかし、モリーナはそんな表面的なテーマは問題ではなく、物語の本質である《美しい愛》が重要なのでした。そこに自分が追い求める本物の女性としての美だとか本質があるのです。

 

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このように映画を観る我々も考え方や捉え方など、人によって様々な感想を与える作品だと思います。

 

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モリーナが語る映画はすごく安っぽく、いかにもB級映画のように映像化されています。そうする事で《ナチスプロパガンダ映画である》とか《モリーナが理想としてる女性》というのものを際立たせて表面化させているのです。

モリーナとヴァレンティンのいる牢屋の中も、薄汚く殺風景で殺伐としています。極限までによけいな物を削ぎ落とす事で、モリーナの細く壊れてしまいそうな心の美しさやヴァレンティンの激しい心の葛藤などを浮き彫りにしているのです。

 

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ラストに向けて二人が辿る運命は、あまりに悲しく、あまりに美しく、いつまでも心に残ります。モリーナが思った事は何だったのでしょう‥‥ヴァレンティンの最後は何を意味するのか‥‥

 

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是非みなさん自身の目でご覧になって感じてみて下さい。